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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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02月01日(月)

紅茶で染めたランチョンマットとコースター

最近、しばらくの間大切にしまっておいた、ベージュのランチョンマットとコースターを使い始めました。
これは、今から10ヶ月くらい前、福祉施設で取り組んでいた 刺し子のプロダクト の制作の最後の日、余った時間のなかでストックの布地を少しでも活かしたいと、パートナー(施設を利用している方です)にミシンで縫ってもらったモノなのです。
僕はもともと手先が(生き方も)不器用なこともあり、肝心の刺し子を含む手縫いやミシン縫いなど、仕上の作業は彼女たちの役目でした。 おかげで随分上達してくれました。

少し細長いランチョンマットは、限られた布地をめ一杯無駄なく使い切るために得られたカタチです(写真1)。

紅茶で染めたランチョンマットとコースター
(写真1)


刺し子のプロダクトでは基本的に、布地の染色に始まり、あらゆる工程を自分たちの手でおこなっていました。 「モノづくりとは何なのか」 を理屈で伝えるのではなく、姿勢で示したかったからです。
染色は植物染めのため、一連の工程にたっぷり半日を要しますが、これもパートナーたちとの協同作業でした。

普段、茶系の染色の時は、矢車(やしゃ)と呼ばれる木の実を使っていましたが、一度だけ僕が好きだった紅茶(フランス製)で染めたことがありました。 数種のフルーツをブレンドした紅茶は、染料としてぐつぐつ煮込んでいる時も、染色の最中も、僕たちに甘い香りを届けてくれました。

自分にも他人にも厳しい僕は、何らかのハンディをかかえているパートナーたちに対しても、染色のための半日間、常に布地にやさしく手をかけることを要求しました。 「手をかける = 愛情をかける」 です。
制作の際、いつだって皆、自分たちの布地を粗末に扱ったことなど、一度もありませんでした。 何もいわなくても布を触る時の素振りで分かります。

あの日の紅茶は甘い香りを失ったかわりに、美しい色彩を授かりました。 自然からいただいた色彩は何だかやさしく、触れる手にも暖かいのです。

今、目の前にあるランチョンマットとコースターは、あの時、一度だけ染めた想い出の紅茶の布地でつくられたモノです。
しかし、また、自然から得た色彩は、洗い、使われるなかで次第に褪せてゆく運命にあります。 だからでしょうか、使わないでしまっておいたのは。 きっと躊躇していたのでしょう。
やがて古い建物で暮らすようになり、手をかけ、生活を営むなかで、時間の経過とともに徐々に色褪せ、朽ちてゆくことが、決して悲しいことなのではなく、寧ろ美しいことなのだと僕に気付かせてくれたのです。
 

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