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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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04月01日(月)

さくらの園

僕がひそかに 「さくらの園」 と、呼んでいる場所があります。
小川のせせらぎの傍に、根を下ろした桜たちはその多くが、子どもたちの目線くらいから枝を伸ばし、派手さはなく、こじんまりとしていて、何となく 静かな森のなか といった風情なものですから、このような場所では 花見の宴 といっても狼藉働くものなど皆無で、子ども連れやご婦人方が点々と、日差しがやわらかに花びらを透かす、あたたかな樹下に集い、うららかな春の一日を過ごすのでした。

そのようななか、小川の畔では4・5名のご婦人方が、ささやかな 野点(のだて) を催しておられました。
ごく内輪の席だったのでしょうか。 偶然近くにいた僕にも 「何の作法もありませんから」 とお誘いいただき、 それでは と、ご好意に甘えて、遠慮がちに腰下ろすと、低い枝に咲く花が思いがけず、近くで ほろり と綻び、音もなく辺りに ぽつぽつ と、春色の水玉模様描くなかで、しばし一服のお茶をいただきました。

野を褥(しとね)に眺めるこの世界は、子どもたちの目線なのだと気づきます。 桜の木はすぐ下の大地にしっかりと根を張り、僕たちと同じように呼吸をしている。 いろいろな生き物たちとのつながりを、素直に感じる自分がここにいる。
この感覚はどこか懐かしい気がするのです。 忘れかけていた、ずっとずっと昔の記憶。

遥か時間をさかのぼって…。
そう、あれは確か小学校低学年の頃であったでしょうか。 家の近所の山の麓から石段を、とことこ百数十段くらいのぼったその先の、ちょっとだけ開けた土地に、地域に水を供給するための水源地があって、森の樹々からの恵みの水を、 とつとつ と蓄えていたのでした。
その水源地の小屋の傍は、からり と日当たりよく町を一望できたためか、周辺に植わった桜の花咲く頃は、ご近所のおばあさん方(子どもの目にはそうみえました)が、お昼時、お重を広げて春のひと時、のんびりとお花見を楽しんでおられました。
そして、そのあたりで遊んでいた僕たちにも、ご馳走をおすそ分けいただいた。 あの頃の記憶が。

草原からお尻に伝わる日差しの温もりと、人の温もり、頬に伝わるそよそよとした風の感覚を思い出すのでした。

さくらの園
「さくらの園」  ペン、水彩

 

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