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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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10月16日(火)

アレクサンダとぜんまいねずみ

アトリエの天井裏には ねずみ が住んでいます(たぶん一匹)。
何しろ、昭和初期に建てられた民家ですから、当然ですが自然素材で出来上がっているわけで、人間のみならず小動物たちにもおしなべてやさしい住まいとみえて、床下は庭と筒抜けですし、どこかから天井裏にも通じているようで、風も生き物も自由に行き来できる、実に大らかなものです。

そのようなわけで、時折り天井裏でかさこそと気配を感じることはあっても、そこはお互い上品ですから、誰にも迷惑をかけることもなく慎ましく暮らしているのです。
天井板一枚隔てて、普段姿をみせないねずみは、多分虫とか食べてくれているのではないか と、僕は思っているのですが、それでも、たった一度だけ庭先で、ちょこんと佇んでいる姿をみたことがあります。 そう、あの レオ・レオニ(Leo Lionni) の絵本に登場するねずみとそっくりの…。

Alexander and the Wind-Up Mouse
「Alexander and the Wind-Up Mouse」
レオ・レオニ(Leo Lionni) 作   (ALFRED A. KNOPF)


レオ・レオニ原作の 「アレクサンダとぜんまいねずみ(Alexander and the Wind-Up Mouse)」 の表紙を眺めると、僕はきまってウットリしてしまい、時間の経つのさえ忘れてしまいます。 そしていつの間にか、 レオ・レオニ の 魔法の扉 の前に立っている自身の姿に気がつくのです。

では、扉を開けて(表紙をめくって)なかに入ってみましょう。

ねずみのアレクサンダは人間の家に暮らしていますが、僕のところと違って、パンくずをもらいに行くと家の人に箒で追い立てられてしまうのですが、ある日ぜんまい仕掛けの おもちゃのねずみ に出会い友達になります。
物語の大半は家の中で展開するのですが、作者は人間の暮らしの道具(人工物)を一際鮮やかに彩色することで、ねずみ色の地味な、しかもちいさな主人公の姿を生き生きと描くことに成功しています。

原画をみるとよく分かることなのですが、ねずみのアレクサンダのモコモコっとした感じは、紙を手でちぎって彩色したものでした。 一方、ほかの人工物はきれいにハサミで切り取ってあります。
そうです。 これらは全て 貼り絵 でつくられていたのです。 むしろ コラージュ と呼ぶ方が正しいのかもしれません。
コラージュは、一般的な絵の具による描き方よりも不自由で、技巧的にも制約されてしまいますが、その不自由さを逆手にとって、作者のレオ・レオニは完璧な構図のグラフィック作品にまで高めています。 そこでは文字ですら、欠くべからざるグラフィックの重要な一要素となって存在しているのです。

ページをめくる度に、画面の美しさに見ほれ驚きます。 そのなかをねずみ色のアレクサンダが…。 いえ、もうねずみも人間も、大人も子どもも同じ生き物として。 皆、魔法の世界にいるのですから。
この絵本の原画を拝見した時、 レオ・レオニ という人は、幾つになってもかわらず素のままで、自身の世界を表現することができたのだな と想像するのです。 そして、やはり天井板一枚隔てて、アレクサンダのようなねずみと暮らしていたのかな と。


◆ 今回ご紹介した絵本はアメリカで出版された英語版ですが、日本の出版社(好学社)からも 谷川俊太郎 の翻訳で日本語版が販売されています。
 

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