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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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01月07日(木)

床の間に2枚のアクリル板

床の間(とこのま)は、住まい手の心持ちをあらわす最も静かなステージです。

一般的には来客をもてなすために、季節にあわせて花を活けたり、軸を掛けたりして表現するところです。
ただ、昔の大きなお座敷ならともかく、現代の限られた面積の住宅のなかでの床の間の存在は、効率の悪い無駄なスペース、もしくは過去のモノ、という風に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、もしあなたが 「雑多なモノにあふれない、シンプルで心豊かな生活を送りたい」 とお考えでしたら、床の間のある生活をおすすめします。

ところで、最近の住宅は窓が多くなったためか、室内に導かれる自然の光の描き出す陰影を感じにくい、きわめて単調なものになってしまったような気がします。 昔の暮らしは様々な制約があったこともありますが、限られたなかでも視線や風、光を慎重に取り込み、季節や時間の微妙な変化を身近な友としていました。
そのような、便利ではないかもしれないけれど、繊細で陰影のある町家暮らしのなかの床の間に最近、2枚のアクリル板を置いてみました(写真1)。

床の間に2枚のアクリル板
(写真1)


この拍子抜けするくらいに小さく、控えめで、そっけなくもあり、かつ無機質なモノは、実は20枚積層されることで、10cm四方のキューブとなる、 アオイ・フーバー のデザインによる美しいオブジェなのです(以前ご紹介した アウラコレクション のひとつです)が、僕の手元にはたまたまいただいた2枚、つまり10分の1のピースしかなかったのです。

この小さな未完のピースを 床の間 という特別な場にしつらえることで、本来の完成されたプロダクトとは異なる姿で、先ほどお話したような 「日本住宅の微妙な陰影」 を自分なりに表現してみようと考えました。
床の間は、唯一外部につながる庭とは縁側を介しており、十分な採光が得られない環境なのですが、太陽の高度が低い1月頃のお昼過ぎのほんの1時間程度、庭木や周囲の建物の間を縫って、かすかな光が届けられるので、そこに2枚のアクリル板をちょうど 屏風のような姿 で立てかけてあります(写真2)。

床の間に2枚のアクリル板
(写真2)


このようにすると安定して自立するだけでなく、アクリル板の角度によって、あるいは見る者の角度によって、差し込む光の表情に様々な変化を与えることができるのです。
このアクリル板の両面には美しい模様が印刷されており、小口面(側面の細長いところ)からは透明感のある独特の色彩を映し出してくれます。 また、かすかな光は床板に、印刷された模様を反映した影を落とし込みます。

ややもすると見落としてしまうような、弱々しい冬の光の素顔を、薄暗い床の間と小さなアクリル板は鏡のように映し出してくれます。 それが、最初にお伝えした 「住まい手の心持ちをあらわす静かなステージ」 の真意です。
 

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