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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
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11月01日(月)

レーベル アンダー コンストラクション のニット

どうしても忘れられないニットがあります。

とあるセレクトショップの店員さんの説明によると、そのニットのタテ糸には 水に溶けやすい性質の素材 が使用されているため、着込んでゆくうちに自然と、しかし確実に 「綻(ほころび)」 が生じ、次第に姿を変えてゆく… という、何と儚くも美しい 詩 のような衣類なのです。
確か7名のデザイナー達によって試みられたブランド(名前は忘れました)のなかの一着で、その一人が ルカ・ラウリニ(Luca Laurini) とのことでした。

それにしても、いくら実験的な試みとはいえ、実際に身に付ける衣類が 消滅してゆく という考え方に対して、疑問を抱かれる方は当然おられることと思いますが、それが一種雰囲気のような ノリ で表現したのであれば、あるいは僕も不快感を持ったかもしれません。 しかし、この目でそのニットをみてみると、もっと大切な 何か が、こちらの こころ に届くような気がしたのです。

僕の手元にあるニットは、前述した ルカ・ラウリニ が、彼の父と共に立ち上げたブランド 「レーベル アンダー コンストラクション(LABEL UNDER CONSTRUCTION)」 から生まれたモノです(写真1)。

レーベル アンダー コンストラクション のニット
(写真1)


カシミア100%の、軽く、やわらかな着心地は、あらゆる部分を極限にまで切り詰めた 隙のない フォルムゆえ、 「これを着るだけで格好よくみえますよ」 といった生やさしいものではなく、良くも悪くも着る人の姿を偽りなく表現してしまいます。 つまり、着る側もつくる側も 逃げ がきかないのです。
したがって、その人自身のからだに沿うように、無理なく素直なラインを描くことが重要になり、理想のラインを実現するために、脇からウエストにかけて、それに肩から袖にかけての縫製部には、実にさりげなく、しかし的確に ヒネリ が加えられているのでした(写真2)。

レーベル アンダー コンストラクション のニット
(写真2)


ルカ・ラウリニの奥儀 ともいえる、高度な ヒネリの法則 によって、アーム部は何となくバナナにも似た有機的なカーブを描くのですが、よく考えてみると、誰もが歩く時も、くつろぐ時も、働く時も、ゆるく肘を曲げていることの方が自然なのですから、快適な着心地を得るためには是が非でもやらねばならなかったのでしょう。
しかし、このような高度な フィット感 を得るためには、当然ながら 厚着はご法度 で、限りなく素肌に近い状態での着用が前提となります。
そうなると、やはりニットですから、特有の ゴワゴワ とした不快な感覚が気になるところですが、何故かそれがないのです。

それは、縫製部の仕舞いがすっきりとおさめられ、カシミアだけが持つ、上質で滑らかな着心地を損ねないよう、惜しみない技術が投入されているのだ ということが分かります。
試しに裏返しにしてみると、「これ、実はリバーシブルですよ」 といわれても、にわかに信じてしまいそうなくらい、また、実際真に受けて、裏返しに着てしまったとしても、何ら問題ないくらいに見事な出来映えです(写真3)。

レーベル アンダー コンストラクション のニット
(写真3)


今こうして、この無愛想なくらい そっけない、それなのに不思議なぬくもりを感じてしまう ニットにそっと手を置いてみると、 つくり手達の声 が聞こえてくるかのようです。

「あなたの 在りのままの 姿 を表現できる 軽くて あたたかい このニットを、私自身も 誤魔化さず 正直につくりました。 なぜならば これを着たあなたは、 ほかの誰でもない たったひとりの あなた なのですから」 と。
 

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