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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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04月01日(金)

月あかり

真夜中にふと目が覚めて 「おや」 と思う時があります。
それは大抵、満月がちょうど空のてっぺんあたりまで昇った頃で、丸いお皿のようなお月様から闇のなかへと、それこそ銀色の光の粒子が音もなく降りてくるような、不思議な感覚です。 一体僕は寝ぼけているのでしょうか。
そのような時は決まって庭を眺めるのですが、キンモクセイの葉がひときわ輝いていたり、手水鉢(ちょうずばち)の水面に映る銀色のちいさなお皿を発見して 「月の子だ」 と、つぶやいてみたりするのです。

京都は月の似合う街だな。 京都の月はちょっと違うな。 と、そう思うようになったのは、東山の麓、哲学の道に程近い、古くてちいさなアパートに暮らしていた頃のことです。
あたりがすっかり夕闇につつまれて、観光客が三々五々家路に着いた時分、静けさを取り戻した東山からしずしずと、お月様が顔をみせはじめる。 その物静かな表情に出会うたび、やさしい山々に囲まれ、清らかな水の流れるこの地の恵みに対し、深い深い感謝の気持ちを抱いてしまいます。

疎水の流れに沿うように、ゆるやかな弧を描きながら続く石畳の小径と桜並木。

関東から遊びに来た方が 「哲学の道の桜もライトアップするといいのにね」 と。
春や秋の観光シーズンには、いろいろな場所で夜間のライトアップが催されているので、彼女もきっとそう思ったのでしょう。
僕の知る限り、過去に二度だけ、哲学の道の北の起点、銀閣寺がライトアップされ、拝観者が殺到したことがありました。
京都にはこんなにも美しくて、やさしい月の光があるのに、まして白砂が盛られた銀閣寺の庭園に、これ程ふさわしい あかり はないはずのに…。

哲学の道 といってもよくみていただくと、周囲は控えめに住宅が建ち並び、人々の生活が静かに営まれているのです。 ぽつぽつと街灯が灯っているくらいがちょうどよく、見通しも悪くないので、治安上の不安もありません。
運良く、その関東からのお客が訪れた日は満月でした。
ようやく顔をみせたお月様に気付いた彼女は、月あかりの下でこういいました。
「京都の月は違うのね」 と。

哲学の道のお地蔵さん
「哲学の道のお地蔵さん」  カラーケント貼り絵、アクリル

 

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