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アトリエかわしろ一級建築士事務所

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05月01日(火)

LC1 スリングチェア

もし、伝統的な日本家屋での暮らしのなかで、空気の流れや開放感を損ねないように…。
そう、たとえば座布団のように自由な感覚で、座り心地のよい美しいたたずまいの椅子を違和感なくコーディネートするとしたら、僕はあえて 「LC1」 を選びたいと思います。

LC1 とは、 スリングチェア(SLING CHAIR) とも呼ばれる椅子で、1928年に ル・コルビュジエ(Le Corbusier)、ピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret)、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand) の3者によってデザインされ、現在もイタリアのカッシーナ(Cassina)という家具メーカーで生産されています。
残念ながら僕自身、 LC1 を所有しているわけではありませんが、幸運なことに京都国立近代美術館のロビーに設置されていて、誰もが自由に利用できる環境にあるので、すっかりお馴染みの存在になっているというわけです。

LC1 スリングチェア

美術館の建物は、1986年に槙文彦の設計により開館しましたが、LC1 もその際に誂えたのではないでしょうか。 白いレザーは特注仕様と思われます。
金属パイプをフレームに採用した椅子としては、家具の歴史のなかでも最初期に属しますが、 毎年毎年数え切れないくらい多くの椅子が登場しては消え去る という繰り返しのなかで、80年以上経っても斬新さを失わない LC1の魅力 とは、一体何なのでしょうか。 また、肝心の 座り心地 はどうなのでしょうか。

美術館にある LC1 をみる限り、四半世紀あまり公共の場に置かれていたにもかかわらず、支障がないどころか、白いレザーの細かいキズや汚れが、むしろ 使い込まれた証し として、新品よりも遥かに好ましく感じるのは、おそらく僕だけではないでしょう。 しかも、ようやく アタリがついてきたかな という感じなのです。
パーツはフレームにはスチールパイプ、 座板 背板 およびアームにはレザーが使用され、主にこの2種類で構成されています。

LC1スリングチェア

一見すると、華奢なようにもみえるフレームは、肉厚で剛性の高いパイプが確実に溶接され、最小限の部材で十分な強度が確保されているものと思われます。 ただし、例外的に背のフレームのみ回転軸によって支持されていて、座る人の姿勢にあわせて、クルクルと自在に追従する仕組みになっています。
ところでこのフレーム、よくみると人の重みのかかる部分、たとえば おしりから太もものあたりにかけて は、フレームが省略されていますし、 背の部分も 背中が触れるところ は、フレームが湾曲していて、身体が直接触れないように工夫されている点、ご理解いただけますでしょうか。 アームの部分についても同様のことがいえそうです。 では、一体どのようにして人のからだを支えているのでしょうか。 それは 「レザーの張力」 が分担しているからなのです。

レザーは、座、背、アーム のいずれの部分も非常に分厚い、かなり厳選された材料が2枚、双方共外側が表を向くようにして重ねられ、しっかりと縫い合わされています。 ただし、レザーはその特性として(特に荷重のかかる場合に)経年変化で伸びることが予測されます。
これに対処する方法として LC1 では、スプリングを用いて座と背の端部同士をつなぎ、常に たるみのない状態 を維持しています。
この 「2重に補強されたレザーをスプリングでつなぐ」 という明快なアイデアは、適度な硬さの自然な座り心地を得ることに見事に成功していて、フラットでスマートなスタイルとは裏腹に、きわめて安楽性の高いものになっているのです。 座と背の位置や角度も適切で、デザインに矛盾な点がみられないのは、入念な試作を経てたどり着いた結果なのでしょう。

一方、アームは 「ループ状のレザーを前後のフレームに引っかけただけ」 という、 潔い としかいいようのない取付けられ方をしていますが、これも両腕をあずけた時の しなやかな感覚 には独特の心地よさがあり、異論をはさむ余地はありませんし、指先の触れるパイプ同士の溶接部分や、端部のストッパーも美しく処理されていて、視覚だけでなく 手触り にも十分な配慮が行き届いていることが理解できます。

LC1 スリングチェア

たいていの椅子は、前面や側面の形態や仕上がりを意識してつくられる場合が多く、(どちらかというと目立たない)背面にまでは気配りが行き渡らない製品も少なくないように見受けられますが、こと LC1 に関しては、背板の裏面のスプリングが むき出し であるにもかかわらず、不思議と違和感なくまとまっているから驚きです。 むしろ 「斜め後方からのスタイルを意識して、このデザインが生まれたのではないか」 と疑って余りあるほど、実に格好よく出来上がっているのです。

そのような意味から、 もし、この椅子が 眺めのよい縁側 などにさりげなく置かれてあったとしたら、上質の2枚の座布団が ふわり と宙に浮いて、座と背の位置に自然と落ち着くかのように、いたずらに視線や空気の流れを遮ることもなく、いつまでもいつまでも、そこにあり続けることでしょう。
 

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まとめteみた.【LC1 スリングチェア】

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