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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
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07月16日(木)

鴨の家族

自分の人生なのだから、あらかじめ決められたレールの上よりも、自分の選んだ道を自分の足で歩いて、分かれ道に立った時も、険しくても後悔しないよう、自分のこころに正直でありたいものだと、ずっと考え続けてきたような気がします。 だからでしょうか、普段の何てことない生活そのものからして、わざわざ遠回りして歩いているようなところがあり、別にそれが嫌だというわけではなく、むしろ、目的地を最短距離で駆け抜けるよりも、その街本来の素顔が垣間見れる生活道路をてくてく歩いているほうが、どうやら性に合っているらしいのです。

実際、京の都大路を舞台に、さながら絵巻物から抜け出したかのような行列の、雅やかな行事がしずしず執り行われていることはご存知でも、その片隅の、とあるお寺の境内でひっそりと産卵した親鴨が数百メートル先の鴨川めざして、幾らか成長した子鴨たちを連れ立っての、よちよちと覚束ない足取りの行列が、ひとりの観光客とていないちいさな通りを舞台に、ごくごく限られた地域の人たちのあたたかい眼差しに見守られながら、しかも、近所の警察署からおまわりさんまで駆けつけて、けしからん!とたしなめるどころか率先して先導し、くれぐれも事故のないようにと切に願いながら、車がひっきりなしに行き交う大通りでは信号わたる時間まで長くして、たまたま居合わせたドライバーから何から一糸乱れぬチームワークで鴨の家族の引越し手伝う様が、ゆるーく執り行われていることまでは、いくら聡明なあなたでもご存知ありますまい。

こんなこともありました。 社家町として知られる趣ある通りを歩いていると、行儀よく並んだお屋敷前へ神社の境内からなみなみと流れる、それは清らかなせせらぎに、やんちゃの盛りと思しき鴨の兄弟が藪から棒に、親の目盗んで元気にばしゃばしゃと、そこらじゅうしぶき飛ばしながら兄弟げんかなぞしはじめて、何しろあまりの勢いなものですから、鷹揚な土地の皆さんも、心配したものかあきれたものか、どちらともいいがたい複雑な表情でハの字に眉よせて、まるで我が子のことでもあるかのように気を揉み揉みしていたりもします。

一体この街はよっぽど鴨と相性がよいのか、あるいは水の流れに事欠かない土地柄ゆえか、そもそも鴨そのものが人見知りしない性質なのか、ともかく、緑ゆたかな水辺のとある遊歩道を歩いてたある日、鴨の家族がすこぶる悠長に過ごしている場面に遭遇する機会に逢着しました。 まだこんな平和な場所があったのかと、ひどく驚かされたのが今から 二年あまり前のことです。

鴨の家族

以来、いつ何時通りかかっても日がな一日餌など探しながら、葉陰や青空をきらきら映す穏やかな波間にちゃぱちゃぱ遊泳したり、運がよければ、小奇麗に清掃された遊歩道脇にまでとことこ上がってのんびり日向ぼっこしてたりして、もはや顔見知りの間柄か、石のベンチに腰掛けているご近所の方々のすぐそばで、お互い 「こんなの当たり前だよ」 といった風情でおのおの普通に過ごしていて、そんな場所ですからよくみると、平素はそそっかしいハトやスズメまでもがついついつられ、めいめいが近くに居心地よい場所見い出して…。
水辺に樹々が根を下ろせば、あらゆる生命は等しく樹下の(平和な)世界の住人なのだと思ってしまうのは、やはりこの街のリズムで歩いているからなのでしょうか。

鴨の家族
 

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