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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
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06月01日(月)

イサム・ノグチの AKARI(23N)

寝室の畳の上には、ただひとつ照明器具が置いてあるだけ。
イサム・ノグチの 「AKARI あかり(23N)」 は、直径84cm、高さ119cmの、ずんぐりとした、どこかドングリにも似た、誰にも思いつかないような不思議なカタチをしています。

あかり 23N

軽量で、すこぶる安定感のある下膨れのシェードは、いかにも頼りなげな4本の脚で持ち上げられておりますが、 夜中などにふと目が覚めると、暗闇のなかに、もはや脚などはどこかへ消え去ってしまって、ふんわり白いシェードが薄ぼんやりと浮んでみえるのが、何ともいえない安堵感に包まれるようで、また、ぐっすりと深い深い眠りの世界に入ってしまうのでした。
ところが、夜が明けて提灯和紙のシェードのなかをいくら覗いてみたところで、そには脚と同じ か細い 鉄の支えと、どこにでもある黒いソケットの白熱電球が ぽつん とあるだけで、ほとんど空っぽにしかみえないにもかかわらず、どうしても僕にはぺらぺらのシェードに覆われた 空気の質 が、何だか特別なもののように思えて仕方がありません。

これは、この器具をデザインしたイサムが、シェードのなかの空気も一緒に 「彫刻」 してしまったからではないだろうか と、考えています。 その証拠にほらっ、なかの電球が灯ると光のひろがりがぴったりと、シェードのヴォリュームに一致しているのですから。 おまけに、天井には満月状のあかりがおぼろげに照射されるという気の利いた おくりもの まで添えて。

あかり 23N

仮に、シェードの中の空気の質を科学的に分析したとしても、周囲と何ら違いはないでしょう。
しかし、 「向こう」 と 「こちら」 の間に引かれた一本の線に 気配 を感じ取る何かを、日本人は持ち合わせているはずです。

詩人であった日本人の父と、教師であったアメリカ人の母との間に生を受けたイサムは、 竹ひごと和紙 という伝統的な提灯の素材、それに最小限の鉄材を合理的に用いながらも、伝統に縛られることなく光を空気で切り取り、カタチにしてしまったのではないでしょうか。 あたかもそれが彫刻であるかのように…。
 

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