プロフィール

アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

検索フォーム

09月01日(土)

双子の星

京の街を歩いていると、通りのそこかしこにお地蔵さんが居られることに気づきます。
そして、お地蔵さんは必ずといってよいくらい、ちいさな祠のなかにちょこんと座っているはずです。 ちいさな祠は、それでも趣向を凝らした木彫が施されていたり、かっちりと石で出来上がっていたり、あるいは竹や装飾金具をあしらっていたり…。 といった具合に、ひとつとして同じつくりはない。 お町内の大工さんや職人さんたちが、めいめいの特技をいかしているからなのでしょう。
お地蔵さんは、ちっとも威張った感じがしません。 それはきっと、お地蔵さんが僕たちと同じ目の高さで、静かに微笑み絶やさないからだと思うのです。 だから、ちょっとご近所の方に挨拶するような気さくさで、軽く会釈しつつ通り過ぎるくらいに、すっかり街のなかに溶け込んでいる。
そんな気取らないお地蔵さんが、どこやら何となく小奇麗になっていたり、金襴緞子や、赤いよだれかけが真新しくなっていることに、もしあなたが気づいたとしたら、まず、季節は 八月の終わり頃 といいきってみても間違いはなさそうです。

八月の二十二、二十三日の二日間(※最近では、これらの日に近い土・日曜日。 日曜日の一日だけで済ませてしまうところもあります)、関西あたりでは 「地蔵盆」 という行事がとりおこなわれます。 大盆踊り大会とか大花火大会、といった仰々しいものではなく、もっとこじんまりとして、本当にささやかで、低予算で、もちろん手づくりの、お地蔵さんの目線的な、正真正銘 お町内 の伝統行事なのでした。 そして何よりも、夏休みも じきおしまい となる子どもたちの、楽しいイベントの日でもあるのです。
地蔵盆の時だけは、お地蔵さんは普段住み慣れた祠を離れて、といっても、すぐご近所なのですが、町家であればオモテに面した座敷の格子を開け放って、地域によっては児童公園に天幕張ったり、どなたかのガレージであったりするわけですが、いずれにしても、ささやかな会場には紅白の幕が張られ、ちょうちん吊るして、雛人形飾るときのような段々には、お菓子やお料理やホオズキなどの お供え であふれるくらい、色とりどりに飾られて、そのてっぺんには、可愛らしい座布団敷かれた上に、ちょこんとお地蔵さんがのっかって、何はともあれ 地蔵盆 ですから、お地蔵さんの前では、子どもたちが車座になって大数珠囲んで、一人でできる子は一人で、幼い子はおとうさん、おかあさんの膝の上で、ご近所のお寺のご住職が唱える念仏にあわせてぐるぐると数珠回す。 そんな数珠回しの輪の周囲ではおじいちゃん、おばあちゃんたちがにこにこ見守ってくれている。 さらにそれをお地蔵さんは、まるごと包み込むように静かに微笑んで見守っていてくれる。 ここでは世代も何もかも遥か飛び越えて、めいめいが無理せずしっくりつながっている。
殺伐とした世の中も、この街に地蔵盆がある限り、コミュニティが途切れることはないような気がする。

地蔵盆といえば、花火や福引きなど、いろいろお楽しみはありますが、やはり何か、いつもと違う 特別な催し が欠かせませんから、毎年毎年何やろうかと思い悩むのは、どこのお町内でもおんなじはずです。
そういえば、以前はじめて個展を開いたとき、貼り絵で紙芝居をつくって、各シーンとお話を順番に並べて展示して、最後に紙芝居の上演会をしたことをふいと思い出して、何しろ物語が宮沢賢治の童話 「双子の星」 だったものですから、お星さまのお話だから 今の時期ちょうどいいよね ということで、じゃあ地蔵盆で紙芝居やりましょうと、地域の皆さん、やれやれとひとまず安心するのでした。
「双子の星」 は、宮沢賢治がはじめてつくった童話二編のうちのひとつで、彼の幼い弟妹に読み聞かせるために書かれたものと伝えられています。
会場の明かりを落として、お地蔵さんの雛壇の隣で上演された紙芝居は、星の世界から海の底の世界、そして星の世界へと場面が転換しつつ、意地悪なキャラクターも登場すれば、親切なキャラクターも登場するけれど、それらをまるごと包み込んでくれる誰かがいて、もうそれは、この地蔵盆そのもののような気がして、水晶でできたちいさなお宮に住む双子のお星さまと、石でできたちいさな祠に住むお地蔵さんと、どっちがどっちか見当つかなくなって、やはり当のお地蔵さんも、そんなふうに思いながら聞いていらっしゃるのだろうか。 などと、上演会の合間合間に、微笑む横顔そっとみつめるのでした。

双子の星
 紙芝居 「双子の星」  カラーケント貼り絵、アクリル
 

Trackback

URL :
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 

Comment