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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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12月01日(火)

アルベルト・インカヌティ(Albert Incanuti)のジャケット

モノに出会い、使い続けることで、つくり手の込めた想いが伝わってくる。
特に日々の生活にかかわるモノはカテゴリに関係なくデザイナーや職人たちの仕事に対する誇りや技のぬくもりを感じることができるのではないでしょうか。
「アトリエかわしろ生活館」 では使い手の立場からの視点を通して、身近にあるモノたちについての物語を綴ってみたいと思います。

アルベルト・インカヌティ は、主にニットを手がけているイタリアのブランドです。
実はこのジャケット以外の製品はみたことがないのですが、この一点だけでも大量に生産される製品が遠く及ばないくらいに、つくり手の気持ちがしっかりと伝わってきます。

アルベルト・インカヌティのジャケット
(写真1)


肩から胸、腕まわりにかけて体のラインに沿うような無駄のない複雑なかたち。
タイトなようでも決して窮屈ではないそのかたちは、あくまでも人体にあわせてつくられていることが、実際に袖を通してみると分かります。 そして、袖口や裾にかけてゆるやかにひろがるシルエットは、たとえファッションに疎くても直感的に 美しい と感じることができます。
袖口や裾がひろがる美しいシルエットを獲得するためには 「ひらり」 とした感じをつくり出す必要がありますが、この冬物のジャケットにはその 「ひらり感」 があります。 あるいは 「軽み(かろみ)」 といってもよいかもしれません。

アルベルト・インカヌティのジャケット(裏地のディテール)
(写真2)


その秘密は裏地の処理をみるとすぐに納得できます。
通常あるはずの裏地が肩と袖の部分のみに削られ、大部分が表地むき出しになっているのです。 このため、縫製部分の収まりが見苦しくならないように、わざわざ裏地の白い布で一つ一つパイピングが施されています(写真2)。
これが黒い表地に優美なラインとなって見事に処理されている という訳です。 ウエストから下に余計な裏地がない故の 「ひらり感」 なのでした。
そして、袖口にもまた異なる手法が用いられています。 ボタンの留め方の工夫で袖口が少しひろがるつくりになっています(写真4)。

アルベルト・インカヌティのジャケット(襟元のディテール)
(写真3)


生地はウールにレーヨンとポリエステルを混ぜることでなんとなく クタビレタ感じ が表現されているようです。 これはウール100%でかっちりと仕上ることを嫌った結果ではないか と想像しています。
仮に意図的に安っぽくみせたとしても、そのさじ加減からエレガントな気配が漂うだけでなく、デニムやレザーパンツとの相性を良いものにしてくれます。
裏地を省略していても暖かな着心地で、インナーを工夫することで真冬でも重いコートを羽織る必要がないほどです。

アルベルト・インカヌティのジャケット(ポケットと袖口のディテール)
(写真4)


最後にこのジャケットの最大の魅力をお伝えしたいと思います。
ちょうど襟首のところの折り返した裏地の部分がわずかに覗いていて、程よい加減にアピールしているのです(写真3)。
普通はみせると格好悪いはずの部分を、さりげなく(意図的に)格好よくみせる方法は素敵です。
これと同じような考え方だと思うのですが、余程注意しなければ気付かないくらいにポケットのフラップの裏地がやはり、ほんの少しだけはみ出すように計算されていることが忘れられません(写真4)。


 

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