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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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11月15日(火)

月の子

幾日か降り続いた雨がようやくあがって 「空ってこんなに広いのか!」 と、今更ながら驚くような、そんなさわやかなある日、森のなかでのお話です。

森のなかなのに、なぜかそのあたりだけはぽっかりと原っぱのように空いていて、それでもまわりは大小さまざまな木々たちにまもられて、上空は少々風が強いのかもしれないけれど、ここだけはさらさらと心地よい風が頬なでて、ぽくぽくと浮かんだ雲や、木の葉の間からほがらかに届く日差しの下、音もなくトンボたちが行ったり来たりしている場所を、もしあなたがみつけたとしたら、そこは 「トンボが原」 と呼んでみてもよいような気がするです。

トンボが原に行く方法はたぶん一つ。 よく 獣道(けものみち) などと呼ばれる動物たちの生活道路のようなものが、実はトンボにもちゃんとあって、そこを通ると間違いなくたどり着けるはずなのですが、もちろん空飛ぶトンボに足跡は残りませんから、これを発見するのは、ちょっぴり難しいかも…。

そんな雲を掴むような不確かなひみつの場所の、トンボも森の動物たちもすっかり寝静まった静かな夜が、運良く満月であったとしたら、背後の暗闇からぽつぽつと、昼間はそんなに目立たなかったユズの実が顔出して、不思議に輝いてみえるはず。 それは、少なくともその夜だけは、あの遥か彼方のお月様にはとても届かないかもしれないけれど、この 月の子 たちならば、ちょっと背伸びすると手が届くかもしれないと、親しみ感じてよじ登る子どもたちに、あなたも出会えるかもしれません。

月の子
 「月の子」  カラーケント貼り絵、アクリル

 
11月01日(火)

ハロルズギア のジョッパーズパンツ

ジョッパーズパンツをご存知でしょうか。
乗馬用のパンツの一種で、膝上にゆとりをもたせ、ふくらはぎから足首にかけての 体にフィットするようなシルエット が特徴で、乗馬の際の膝を曲げた姿勢に無理がなく、足元がばたつくこともなく、ブーツの着用にも適した実用性の高いスタイルを備えています。
英国の貴族などが乗馬の際は、この種のパンツにジャケットを組み合わせて、たいへんエレガントに着こなしている姿を皆さん、映画等でご覧になったかと存じます。
では、この気品ただよう異国の伝統的な衣類を、オートバイ用として制作し、販売していたメーカーが、かつて存在していたことをご存知でしょうか。 しかも日本のメーカーで、あのジョッパーズパンツを。

ハロルズギア(HAROLD'SGEAR) は、1950~60年代頃の英国製のオートバイに乗るライダーにふさわしい、品格ある大人のためのオートバイ用のウエア等を手がけるブランドとして、1980年代中ごろに誕生しました。
以後、97・8年頃まで、少数派の大人のライダー達のために、こだわりの高いウエアを提供していましたが、その後理由は定かではありませんが、一般受けのする 今風 のデザインに軌道修正したもようです。
確かに、こだわりのある大人のライダーは、モノを大切に手入れしながら使いますから、そんなに頻繁にウェアを買い替えないわけで、販売数には限界があったのかもしれません。
そういう僕自身も、十数年前に購入した ジョッパーズパンツ を、今でも大切に所有していますから。

ハロルズギアのジョッパーズパンツ

乗馬の場合は、おのずと膝を曲げた姿勢になりますから、立ち姿勢を前提につくられた通常のパンツでは、膝が突っ張ってしまい不都合が生じますが、ジョッパーズパンツはこの問題を解消しているわけです。
実は、オートバイの乗車姿勢も、乗馬のそれに近いために同様の問題が発生し、足元のすっきりしたジョッパーズのスタイルはライダーにも都合がよいという理屈になり、英国貴族のアウトドア・スタイルもあながち 的外れ ではないということになります。 何しろオートバイを 「鉄の馬」 にたとえることもあるくらいですから。

ハロルズギアも、そのあたりは熟慮した上で、街中での(オートバイを降りての)使用でも違和感を与えないよう、太ももまわりのゆとりを最小限に抑えつつも、膝頭のあたりを立体的に縫製して巧みに窮屈さを解消していますし、前面のポケットに取り付けたファスナーの金具がオートバイのタンクやシートを傷つけないよう、アクセントを兼ねて、レザーで包むような、手間のかかるつくりにしてあります。
また同じような理由で、足元に取り付けられたファスナーは、体のラインにフィットさせる機能とあわせて、レザーのパイピングで裾まわりを効果的に引き締めています。

ハロルズギアのジョッパーズパンツ

足元のファスナーが、側面ではなく背面に取り付けてありますが、これはファスナーの金具とオートバイ本体との接触を避けるための配慮です(走行中に足首でオートバイを挟み込むようにすると一体的に操作ができるため)。

僕の知る限り 「オートバイとジョッパーズパンツ」 という組み合わせ、後にも先にもハロルズギアだけだったのでは…。 ひょっとすると、ファッションのコーディネートが難しいために敬遠されてしまったのかもしれません。
乗馬よりも高速走行となるオートバイでは、走行する際の風圧に対して配慮する必要があり、一般公道では排気ガスの影響も考えなくてはなりません(結構汚れます)。 いつものジャケット というわけにもゆかないのです。
しかし、着こなしが難しい と焦ってみたところで仕方がありませんから、この際、歳を重ねながら こころの引出し を増やしてゆきたいと思います。
それまで大切に使います。 ジョッパーズ。 できれば乗馬も…。