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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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07月22日(金)

黒谷さん

黒谷さん は、地域の人たちにとても人気があります。

京都の方はご存知だと思いますが、黒谷さんは 人 ではなく 場所 です。 正確には 金戒光明寺(こんかいこうみょうじ) という、鎌倉時代、法然上人によって開山された浄土宗最初の立派なお寺なのですが、皆さんどなたも親しみを込めて 「黒谷さん」 と、そう呼んでいるのです。

黒谷さんはちょっとした丘のような所にあるものですから、山門やお堂や三重の塔などはそれぞれ石段や坂道でつながっていて、土塀に囲まれた塔中(たっちゅう)を訪ねるにも、石畳の小道や昔ながらの未舗装道路が残っているといった、格式ばらない 「素顔のお寺さんの香り」 がそこここに漂っているのです。

周囲には大きな道路もなく、曲がりくねった細い坂道に沿うようにして家々が慎ましく建ち並んでいて、なんとなく 地域とお寺とがつながっている こともあってか、お寺のほうも妙に取り澄ました感じがしなくて、だから逆にちょっと 隙がある というか、 たとえば山門の周囲がなんとなく土のまま開けているので、山門を基地にして子どもたちの遊び場になったり(ぐるぐる走れますから鬼ごっこもできます)、それからお年寄りの皆さんの朝の体操の場になったり(兎に角すごくお元気です) と、人々の暮らしが家からはみ出してお寺の境内の 間(ま) にすっかり馴染んでしまっているかのような。 それは多分 「和」 と表現するのが如何にも相応しい、そういう 理想のコミュニティ が成り立っているように思えるのです。

だからでしょうか。 黒谷さんに足をはこぶと、いつもどこかに自身の居場所があると感じるのは。
そこには立ち止まっていても誰にも叱られない道端があったり、山門を見下ろす石段の途中の木陰の下であったり、あるいは夕日が望める場所であったり。 きっとそれは子どもの頃、いつかどこかでみた懐かしい 「あの場所」 に居るのだと…。

黒谷さん
「黒谷さん」 ペン、水彩

 
07月15日(金)

ブリー の解脱バッグ

ブリー(BREE) は、1980年に創業されたドイツのレザーバッグ・ブランドです。

ブリー の特徴は、ヌメ革を使った頑丈で機能的なバッグをつくり続けている点です。
ヌメ革とは、植物から抽出されたタンニンという成分によってなめされた伝統的な手法で、表面加工を施されていない 素(す) に近い仕上がりは、はじめ明るいベージュ色ですが、使い込むほどに 艶のある飴色に変化する という特性を持ち合わせています。
よって、厚みのあるしっかりとした革で、便利で使い勝手に優れた種々のポケットやハンドルなどが備わった、ドイツらしい製品が揃っているわけなのですが、ここでは敢えて、数多いラインナップのなかから 「Simplyシリーズ」 を取り上げたいと思います。

Simplyシーリーズ では、厚さがわずか0.5mmの極薄レザーを使用した、ちょうど 「紙袋」 のような形態の 簡素な(simple) バッグです。

ブリーのバッグ(Simplyシリーズ)

まるで厚紙のような2枚の薄いレザーは、紙袋とそっくり同じように折り曲げられ、貼り合わされています。
さすがに 糊付け というわけにはいかないとみえて、要所はきちんとミシンで補強されていますが、仕上がりは折りたたまれた 紙袋そのもの です。 当然裏地などもなく、革の切りっぱなしですが、ご覧の通り、長く使い続けても何ら問題ありません。

紙袋は、確かに便利で機能性に優れていますが、脆く短命です。
Simplyシリーズ の評価できる点は、これまでメーカーが培ってきた 「痒いところに手が届く」 くらい揃っていた機能的な要素をすべて白紙に戻して、 使い方をユーザー側に問う製品を提示したところにある と思っています。 これは単に、メーカーが 何もしていない のではなくて、 目立たないところをしっかりと高い技術でカバーして、ユーザーを支えているからこそ成し得たこと だといえるでしょう。

ところで、この Simplyシリーズ は、基本はヌメ革による仕上げなのですが、別にカラーも用意されています。
僕が使っているバッグは白く染められています。 こうなると、折角の上質なレザーの質感が台無しになってしまうのではないか と、皆さんお感じになるかもしれません。
しかし、華奢なスタイルからは想像できないくらい頑丈なバッグは、使い続けるうちに少しずつ持ち手や角の部分が削られて、 ヌメ革本来の表情 が徐々に現れてきているのです。

これは、長く使い続けること。 そして何よりも、 革の特性を知り抜いたメーカーの、デザインに対する真摯な姿勢 を示しているのだ。 と僕は受け止めています。

ブリーのバッグ(Simplyシリーズ)