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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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05月15日(日)

イサム・ノグチの AKARI

ある方のお庭を拝見させていただいた折、片隅に何気なく置かれていた 石 がとても心に残っています。
それは ちいさな石彫 なのですが、部分的に手を入れてあり、もしかすると イサム・ノグチ の仕事でもあるように思われたのですが、誰にも言わずそっと心の内にとどめました。

なんだかそっとしておきたかったのです。

そうしたくなるくらい、日差しのぬくもりや雨露、土や風にさらされている姿が、いかにもその場の空気にしっくりと馴染んで、過去に美術館でみた時には到底得られなかった、作品本来の 在るべき姿 をそこに認めることができたからです。 きっと、作品と大地、人との間の 隔たり が、すっかり無くなっていたのだと思います。
そのような考え方は、当のイサム・ノグチにもあったようで、晩年になるほど作品が大地に近づいていくようでした。 また、一部の裕福なコレクターだけでなく、 多くの人たちの近い場所にあることを望んでいたとも聞きます。

そんなことを考えていたイサムですから、岐阜の伝統的な提灯(ちょうちん)づくりの技法を応用し、当地の職人の手で量産可能なプロダクトのアイデアを思いついたに違いありません。
照明器具 「AKARI あかり」 は、このような考え方を素直にカタチにしたもので、実に今から60年近くも前の話なのですが、彼亡き後もそのままの姿でつくり続けられていて、もちろん今でも購入することができます。
イサム・ノグチは AKARI を照明器具というよりも 「光の彫刻」 として位置づけ、その仕事に対し長年にわたって情熱を注ぎます。 結果として、驚くほど膨大な数の製品が展開されているのですが、そのあたり、あまり知られていないのが実情なのかもしれません。

あかり ST2-J1

一般的には、 球状のペンダントランプ や 小ぶりな卓上ランプ などが有名で、インテリアショップなどでも時折みかけられますが、個人的にはもっと大きなもの、それも フロアランプ がおすすめです。
今回紹介するのは ST2-J1 と呼ばれるモデルで、高さが190cmあります。
和紙製のシェードはエッジが効き、 ねじれ が入った彫刻家でなければ思いつかないような形態ですが、つくりは紛れもなく 「提灯そのもの」 で、実際ぺったんこに折りたたむことができるので驚きです。 当然ながら光をやわらかく透過するので、あかりが灯ると 光の彫刻 と化します。

あかり ST2-J1

このフロアランプは、背が高くスリムなので、部屋のコーナーに置くと上手に使いこなすことができます。 部屋の隅というのは、いわば 「インテリアの死角」 なので、ここに明りを灯すと、狭い空間でも思いのほか 広がり を生み出すことが可能となるものなのです。
リビングのような居室であれば、部屋全体の照度を抑えてフロアランプに補助的な役割を持たせるとよいですし、玄関ホールや廊下の片隅に設置すると、それだけで その場の雰囲気が一変 します。

たとえ誰にも気付かれず、片隅にうずくまっていたとしても、廃れることがなく、もはや風景の一部となってしまった石彫作品も、人々の生活のなかにほのかに灯る AKARI の存在も、きっと、どちらも同じように僕たちの心のなかにあり続けることでしょう。
 
05月01日(日)

マリアージュ・フレール の紅茶

世の中にはいろいろな方がおられます。 むしろ、それが自然なことなのかもしれません。

たとえば古い日本家屋に暮らしていて、普段は緑茶とか飲んでいるのだけれど、時には床の間に活けた花を愛でながら、あるいは日当たりのよい縁側から庭を眺めながら、ゆったりと紅茶とか飲んで過ごしてみたい。 できれば甘い香りの…。
といった、大変難しいご要望をお持ちの方がもしおられましたら、実は僕もそうなのですが、 マリアージュ・フレール(MARIAGE FRERES) の ヴィヴァルディ(VIVALDI) をおすすめいたします。

ヴィヴァルディ は、カシス、いちご等の赤いフルーツにヴァニラ等をブレンドした、甘い香りの フレーバード・ティー です。
甘い香りの紅茶は マリアージュ・フレール のなかでも、とりわけ多くの銘柄が揃っていますが、何故 「ヴィヴァルディ」 という選択なのか。 それ以前に、古い日本家屋の、あのしっとりとた雰囲気に、甘い香りの紅茶自体がミスマッチなのでは? と、疑問をお感じになられた方も当然おられることでしょう。

ただ甘いだけの香りであれば、やはり、土壁や苔のしっとりとした空気にはそぐわないと、確かに僕も思いますが、それでもゆったりとした時間の流れを共有できる、そんな ゆかしい香り があってもよいのでは。 と、こころの片隅で考え続けていたある日、お店を訪れた折に、上品な制服の方から 「甘い香りがお好きでしたら」 とすすめられ、茶葉の香りを確認して 「これならば」 と確信できたのです。
遠い異国の地(フランス)でブレンドされた、如何にもヴェニスの古風な洋館が似合いそうなこの紅茶は、京都のしっとりとした町家の空気のなかでも、何故だかしっくりと馴染んでしまう。 床の間や障子や籐むしろなどのつくり出す 繊細な趣 が、どうもしっくりと馴染んでしまうから不思議です。

香りについても、紅茶についても、何の専門的知識もありませんから、僕自身に的確な説明のしようもないのですが、少なくとも ヴィヴァルディ についていえることは、 時間を経た空間を好むこと。 適度に空気が潤っている環境がふさわしいこと。 そしてそのなかの香りに、他にはない 「気品」 を確かに感じました。

ヴィヴァルディ
VIVALDI  (MARIAGE FRERES)