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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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01月20日(水)

レオ・レオニのフレデリック(Frederick)

皆さんは子どもの頃、いつも肌身離さず置いておきたいくらい大切にしていた、お気に入りの絵本を覚えておいででしょうか。
僕にはありませんでした。 絵本がずらりと並んだ図書館の本棚から大好きな本を探し出した記憶すらないのです。
だからでしょうか。 大人になってから絵本という、分かりやすくて、多くの人たちの手に届く、いや、こころに届くモノとして、絵本を意識するようになりました。 忘れ物を取り戻したいという憧れもあるのかもしれません。

今回ご紹介する絵本の作者は、この世界でも著名な レオ・レオニ(Leo Lionni) です。
レオ・レオニ は、絵本作家である以前に優れたアーティスト、ことにグラフィックに関しては稀にみる才能の持ち主です。 その彼が惜しみない情熱を注いだ絵本制作のきっかけは、愛する孫のためではなかったかと記憶しています。

フレデリック
「Frederick」
レオ・レオニ(Leo Lionni) 作   (ALFRED A. KNOPF)

絵本 「フレデリック(Frederick)」 は、 「フレデリック~ ちょっとかわった ねずみの はなし」 というタイトルで、日本の出版社からも販売されていますが、同じ原画でも出版社によって印刷された色彩には差があるようです。
好みの問題かもしれませんが、僕はアメリカの出版社の方に殊更な美しさを感じたので、あえて英語版を選びました。

数多い絵本作家のなかでも、 レオ・レオニ ほど構図の巧みな方を僕は知りません。
特に 「フレデリック」 の場合は、背景が真っ白なので、画面構成に誤魔化しがきかないのですが、ねずみ(フレデリックもねずみです)と石、それに木の実や木の葉など、彼らの身のまわりに必要な最低限の要素のみで、自然界のあるがままの姿を美しくとらえた有様は、日本庭園に配された石や植物にたとえることができるほどです。
つまり、そこには 「余白」 の美しさが認められるのです。

絵本において、何よりも大切な点。 それは 作者の視点 ではないかと思います。
残念ながら、多くの絵本には、大人の目線から子どもに向けて描かれた作品が多いことです。 しかしながら、この作品は、子どもどころか 小動物の視点 で描かれているのです。 だから、それをみる僕たちはフレデリックのそばで、自分が人間であることなど気にせずに、驚いたり、喜んだりできるのではないでしょうか。 大人とか子どもとか関係なく。
 
01月07日(木)

床の間に2枚のアクリル板

床の間(とこのま)は、住まい手の心持ちをあらわす最も静かなステージです。

一般的には来客をもてなすために、季節にあわせて花を活けたり、軸を掛けたりして表現するところです。
ただ、昔の大きなお座敷ならともかく、現代の限られた面積の住宅のなかでの床の間の存在は、効率の悪い無駄なスペース、もしくは過去のモノ、という風に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、もしあなたが 「雑多なモノにあふれない、シンプルで心豊かな生活を送りたい」 とお考えでしたら、床の間のある生活をおすすめします。

ところで、最近の住宅は窓が多くなったためか、室内に導かれる自然の光の描き出す陰影を感じにくい、きわめて単調なものになってしまったような気がします。 昔の暮らしは様々な制約があったこともありますが、限られたなかでも視線や風、光を慎重に取り込み、季節や時間の微妙な変化を身近な友としていました。
そのような、便利ではないかもしれないけれど、繊細で陰影のある町家暮らしのなかの床の間に最近、2枚のアクリル板を置いてみました(写真1)。

床の間に2枚のアクリル板
(写真1)


この拍子抜けするくらいに小さく、控えめで、そっけなくもあり、かつ無機質なモノは、実は20枚積層されることで、10cm四方のキューブとなる、 アオイ・フーバー のデザインによる美しいオブジェなのです(以前ご紹介した アウラコレクション のひとつです)が、僕の手元にはたまたまいただいた2枚、つまり10分の1のピースしかなかったのです。

この小さな未完のピースを 床の間 という特別な場にしつらえることで、本来の完成されたプロダクトとは異なる姿で、先ほどお話したような 「日本住宅の微妙な陰影」 を自分なりに表現してみようと考えました。
床の間は、唯一外部につながる庭とは縁側を介しており、十分な採光が得られない環境なのですが、太陽の高度が低い1月頃のお昼過ぎのほんの1時間程度、庭木や周囲の建物の間を縫って、かすかな光が届けられるので、そこに2枚のアクリル板をちょうど 屏風のような姿 で立てかけてあります(写真2)。

床の間に2枚のアクリル板
(写真2)


このようにすると安定して自立するだけでなく、アクリル板の角度によって、あるいは見る者の角度によって、差し込む光の表情に様々な変化を与えることができるのです。
このアクリル板の両面には美しい模様が印刷されており、小口面(側面の細長いところ)からは透明感のある独特の色彩を映し出してくれます。 また、かすかな光は床板に、印刷された模様を反映した影を落とし込みます。

ややもすると見落としてしまうような、弱々しい冬の光の素顔を、薄暗い床の間と小さなアクリル板は鏡のように映し出してくれます。 それが、最初にお伝えした 「住まい手の心持ちをあらわす静かなステージ」 の真意です。