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アトリエかわしろ一級建築士事務所

Author:アトリエかわしろ一級建築士事務所
「がま口から建築物まで」
日々の生活につながっている モノづくり・住まいづくりのためのデザイン事務所です。

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12月31日(木)

昔のこども着物

今から17・8年位前、アンティーク着物を扱うショップで目に留まったのが 小さな子ども用の着物 でした(写真1)。
着物に関してはまったく不案内であったにもかかわらず、自分が着る訳でもない古い着物を求めたのは、今までに出会ったことのない美しい姿をそこに認めたからなのでした。
昔の着物 といってもそれ程古いわけでもなく、特別高価なものではないと思われる着物なのに。
とりわけ後姿に感じる美しさの秘密は何なのだろうか。

それが分かったのは、しばらく経ってからのことでした。

昔のこども着物
(写真1)


縁あって僕に見初められた着物は、当時住んでいた古いながらも感じのよいアパートの一室に飾ってあったのですが、管理人をしていたやや年配のご婦人(上品な京ことばを話されていました)は、それをみた途端 「なつかしい」 といって、その着物に施されている 「身上げ」 について説明をしてくださいました。
ご婦人によると、子どもの成長にあわせて着られるように、あらかじめ大きなサイズの着物の両肩のあたりと腰のあたりを縫いつまんでおくことで丈を縮めてあるのだそうでした(図1)。

身上げについて
(図1 身上げについて)


よくみると 「肩上げ」 と 「腰上げ」 はそのまま残されています(写真2)。
おそらく我が子のためにと母の手で繕ったのでしょう。 七五三のためにあつらえたのでしょうか。
何故だか理由は分かりませんが、この着物は子どもの成長を待たずして彼女たちの手元を離れ、何十年後かに僕の前に現れたことになります。
その時に、この着物の魅力の理由に気づいたのでした。

昔のこども着物(部分)
(写真2)


「有用の美」 とは無用の対極にある美しさをあらわす言葉です。
もし、皆さんにとって聞きなれない言葉であれば、僕の造語かもしれませんが、その古い小さな着物はまさにそうだったのです。
複雑な曲線を描く洋服でも丈の調整は可能かもしれませんが、肩幅が体にあっていなければおかしなことになってしまいます。
一方、直線を基本に構成される着物の場合、 身上げ によって違和感なくサイズの調整が可能となります。 しかも美しい。 このような考え方は成長の早い子どもの衣類には理想的であるといえるでしょう。
日本人、特にいにしえの人たちは生活のなかで知恵を育み、間違いなく美を創造していたのだと思います。
 
12月14日(月)

アウラコレクションの醤油差し

アウラコレクション とは、主に店舗インテリア等の素材の開発を手がける ㈱アウラ が、時間を経ても残るようなモノのあり方を目指して実現させた、日常生活の中で使い続けることのできる、クオリティの高いプロダクトです。

このコレクションの特徴は、生活道具でありながらも、どれもが(日本の)職人の手仕事を通した伝統的な素材や技術、あるいは先端の特殊素材や技術によって成り立っているということ。 そして、何よりも(日本だけでなく世界中の)デザイナー達がそのことをしっかりと意識しているところにあります。
ともすれば安易な製品が大量に流通する時代のなかで、このようなプロダクトの存在が、本質を持ったモノたちと日々の生活を過ごすことの大切さを私たちに教えてくれることでしょう。

そのなかの一つとして 「醤油差し」 を挙げてみたいと思います(写真1)。

アウラコレクションの醤油差し
(写真1)


醤油差しなので、高さが10cm弱の小さく控えめなプロダクトですが、何度みても これ以上のかたちは考えられない というくらい、デザインとして究極のモノのような気がします。 これは間違いなく理想の形でしょう。
デザインは 長谷川武雄 によるもので、自ら制作し、型をおこし、優れた職人の手で丁寧に製品化されているものと思われます。
素材は磁器ですので一般的な陶器よりも収縮が激しく、実現のためには高度な技術が欠かせないはずです(写真2)。

アウラコレクションの醤油差し
(写真2)


注ぎ口の描く曲線とその角度をみてください。 醤油を注いだ後に先端から液だれすることがなく、うっかりとテーブルクロスにシミをつくることなど皆無です。
醤油を注ぐたびに感謝の気持ちに包まれます。 幸せとはこのような日常の何気ない行為のなかにこそ見出せるものなのかもしれません。

アウラコレクションの醤油差し
(写真3)


よくある筒状のかたちでは、手にとって注ぐ際に握るようにして持ちますが、この丸みのあるかたちでは手の中に包まれるようにフィットしてくれます(写真3)。
華奢なモノほど大切に扱う必要がありますが、この形態と小ささは、そっと扱うための自然のかたちの結果なのかもしれません。 そして、常温での風味を損なわないためには、それほどたくさんの醤油を入れておく必要がないことも付け加えておきたいと思います。